糖尿病の治療薬
-第15回 糖尿病治療薬の飲み合わせ-その1
薬物相互作用-薬物動態学的作用
今回から、糖尿病治療薬と薬物相互作用についてお話したいと思います。
「薬物相互作用」とは、どういうものでしょうか。「相互作用」を辞書でひくと「お互いに働きかけ、影響を及ぼすこと」とあります。ですから、「薬物相互作用」とは薬の作用に影響を及ぼすことを意味します。平たく言うと、薬の飲み合わせのことです。
複数の薬を一緒に飲んだときに、薬の効果が予想以上に強く出て副作用が現れることがあります。また、逆に期待した効果が得られないこともあります。このような現象を、薬物相互作用と言います。
また、薬物相互作用は薬同士に限ったものではなく、嗜好品や食品などの影響で、薬の作用が強くなったり弱くなったりすることも含まれます。
この薬物相互作用は、薬物動態学的相互作用と薬力学的相互作用に分類されます。
薬物動態学的相互作用
薬物動態とは、薬の吸収、分布、代謝、排泄という体内での薬の動きの過程のことです。薬物動態学的相互作用とは、この薬物動態で起こる相互作用のことをいいます。
薬を飲むと、胃で溶解された薬の成分は小腸で吸収され、血液の流れに沿って分布されて患部へ届き効果を発揮します。体内に入った大半の薬は肝臓で分解されます。肝臓では、薬を分解する薬物代謝酵素が働いて体の外へ出す形へと変えるのです。薬の排泄は主に尿や便、薬によっては呼気として排泄されます。
これら薬物動態のそれぞれの過程で、他の薬の併用などによって薬の効きに影響が出てしまうことがあるわけですが、ここでは「代謝」を例に挙げてみましょう。
代謝の過程においては、他の薬の併用や食品などの影響で、代謝酵素の働きが増長されることがあります。また、逆に阻害されたりすることもあります。そうすると薬の成分の血液中の濃度が増減して、期待する効果よりも効きすぎたり、逆に効かなくなったりします。