血液から見える健康
-第20回 糖尿病と糖尿病関連の検査
糖尿病腎症の検査
血清クレアチニン
(第15回参照)
筋肉の細胞には、クレアチンリン酸というエネルギー貯蔵物質が多く存在しています。アミノ酸の一種であるクレアチンがリン酸化されたもので、肝臓で合成されて血液によって筋肉へ運ばれます。
血清クレアチニンとは、このクレアチンやクレアチンリン酸が、筋肉収縮のエネルギー源として代謝されたとき(燃やされたとき)血液中にできる物質です。この血清クレアチニンは、腎臓ではほとんど再吸収されず、尿中に排泄されます。
糖尿病腎症の場合、腎機能が低下しているためにクレアチニンの尿中への排泄が悪くなり、血清クレアチニンの数値が上昇します。ただし、糖尿病の初期においては、腎機能はまだ低下しておらず、高血糖の影響によりクレアチニンの尿中排泄はむしろ多くなるため、血清クレアチニンの数値は低下します。
尿素窒素
(第15回参照)
体内で過剰に摂取したアミノ酸が分解されるときにアンモニアという有害物質ができます。尿素窒素は、有害物質アンモニアを肝臓で無害な尿素に変えるときにできる物質で、臨床検査では、この尿素のことを尿素窒素と言い表しています。
血液中の尿素窒素は、腎臓で35~70%が再吸収され、残りが尿中に排泄されます。ところが糖尿病腎症の場合は、腎機能が低下しているために尿素窒素の尿中への排泄が悪くなり、血中の尿素窒素の数値が上昇します。
尿中微量アルブミン
(第16回参照)
尿中微量アルブミンは、糖尿病腎症の初期に尿中に出てくる非常に少ない量のアルブミンを検出する検査です。
アルブミンは生体内のタンパク質の主成分で、体液の浸透圧を維持し、いろいろな物質の運搬を行う重要な物質です。糖尿病腎症になって腎臓のろ過機能が低下した状態になると、本来ならば尿中へ排泄されないはずのアルブミンが排泄されてしまいます。
クレアチニンクリアランス
(第16回参照)
クリアランスとは、血液中の老廃物をろ過することにより除去することをいいます。
クレアチニンクリアランスは、腎臓の機能を調べるために、糸球体ろ過量(GFR: glomerular filtration rate)という腎臓の糸球体でろ過される原尿の量を測定する検査です。
糖尿病腎症になって腎臓のろ過機能が低下した状態になると、クレアチニンクリアランスの数値は低下します。