血液から見える健康
-第20回 糖尿病と糖尿病関連の検査
糖尿病の検査-2
Cペプチド
(第9回参照)
インスリン治療を行っている糖尿病患者にインスリンの検査をした場合、自分の体でつくられたインスリン(内因性)だけでなく、注射したインスリン(外因性)も含めて測定されてしまいます。
そこで、インスリンと同じくすい臓のβ細胞でインスリンと同じ量がつくられるCペプチドを検査することで、自分の体でつくられたインスリン(内因性)の量を推定することができます。
グルカゴン
(第10回参照)
グルカゴンは、すい臓から分泌されるホルモンの一種です。グルカゴンは、血糖値が低下するとすい臓から分泌され、血糖値を上昇させます。グルカゴンは、血糖値が上昇するとすい臓から分泌され血糖値を低下させるインスリンとは逆の作用を持ちます。
グルカゴンは、健康成人の場合は血糖と逆に変動するので、血糖値が上昇すればグルカゴン値は低下し、血糖値が低下すればグルカゴン値は上昇します。しかし、1型糖尿病と一部の2型糖尿病の場合は、血糖値が上昇してもグルカゴン値は低下せず、高値となります。
遊離脂肪酸
(第17回参照)
遊離脂肪酸は、FFA(Free Fatty Acid)またはNEFA(Non-esterified Fatty Acid)とも呼ばれる、血液中でアルブミンと結合している脂肪酸のことをいいます。
遊離脂肪酸は、体内の脂質代謝の他、糖代謝にも関与しています。糖尿病になってインスリンの分泌量が少なくなっていると、中性脂肪を分解して遊離脂肪酸を生成するホルモン感受性リパーゼというホルモンの働きを抑える働きが弱まります。そのため中性脂肪の分解が亢進して、遊離脂肪酸が増える=血中濃度が上昇します。
乳酸
(第18回参照)
乳酸は、体内のエネルギー代謝において重要な物質で、ブドウ糖を分解して体に必要なエネルギーを作り出す解糖と呼ばれる代謝経路に関与しています。
解糖によって増えた乳酸は、血中に放出されて肝臓へ送られます。肝臓では、酵素の作用で乳酸から糖新生によって再びブドウ糖に戻されます。そして血液を通して運ばれて筋肉などに取り込まれるのです。
糖尿病では、肝臓や筋肉において血糖が生成される(糖新生)より、乳酸を生成される(解糖)方が亢進しているため、乳酸の血中濃度が上昇します。
血中ケトン体
(第12回参照)
血中ケトン体は、糖尿病においては血糖コントロールの管理状態を調べることができる検査です。
ケトン体は、体内のエネルギー代謝の過程で脂肪を分解するときに生成される遊離脂肪酸という物質の代謝産物です。アセト酢酸、3-ヒドロキシ酪酸、アセトンという3つの物質の総称で、総ケトン体ともいいます。
糖尿病の場合、インスリン作用不足によって体内の細胞に血糖が取り込まれなくなり、エネルギー源として血糖が利用できなくなります。そうすると、体はエネルギー源として脂肪を分解してできる血糖(糖新生)を利用しようします。この脂肪を分解するときにケトン体が生成されるのですが、筋肉や腎臓での処理能力を超えた場合は血中や尿中に出ます。血中に出たものが血中ケトン体です。
尿中ケトン体
(第12回参照)
尿中ケトン体も血中ケトン体と同様、糖尿病においては、血糖コントロールの管理状態を調べることができる検査です。
インスリン作用不足によって体内の細胞に血糖が取り込まれなくなり、エネルギー源として血糖が利用できなくなると、体は脂肪を分解してできる血糖を利用しようとします。このとき生成されたケトン体が、筋肉や腎臓での処理能力を超えた場合に血中と尿中に出ます。尿中に出たものが尿中ケトン体です。
尿中ケトン体は、糖尿病でない健康成人の尿中にもわずかな量が出てくるものなのですが、通常の尿中ケトン体検査(尿定性試験紙)では検出されません。
尿糖
(第11回参照)
尿糖は、血糖が高くなって尿中に溢れ出た糖がどのくらいあるかを調べることで糖尿病かどうかを判定する検査です。
糖尿病などで血糖が上昇して腎臓の糖排泄いき値を超えた場合や、腎性尿糖のように腎機能の低下によって糖排泄いき値が低下した場合に検出されます。