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Come On! 糖尿病教室

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-第9回 自律神経系の障害

糖尿病神経障害で自律神経の機能が低下すると

検査の結果、Fさんは頸動脈検査では血管に狭窄などの血流異常はありませんでしたが、心電図R-R間隔検査で自律神経の検査をしたところ、心電図の心拍の変動(ゆらぎ)が低下していました。そこで呼吸負荷(深呼吸)による心電図R-R間隔検査をしたところ、心拍の変動は増えず、副交感神経の機能低下が疑われました。

再診察で、起立性低血圧の検査を行った結果、糖尿病神経障害が進行し、起立性低血圧を起こしていることがわかりました。
さらに下痢や胃の調子が悪いという消化管症状についても神経障害が原因である可能性が高いものの、高齢なことからも原因が他にあることを疑い、腹部エコーと上部内視鏡(胃カメラ)検査をすることになりました。その後、腹部エコーと上部内視鏡検査では異常はなく、糖尿病神経障害による消化管症状であると診断されました。
 

糖尿病神経障害の症状

糖尿病神経障害が進行して感覚神経が障害されると、前回お話したように、手足の感覚が低下し、脳に情報が伝わらなくなりますし、Fさんのように自律神経が障害されると内臓の働きや血液の流れに不調が生じます。
糖尿病神経障害の初期症状は足のしびれだけですが、進行すると、激しい痛みや感覚のマヒ、足壊疽(えそ)、心臓(拍動)調整や起立性低血圧(立ちくらみ)、胃腸症状など、多種多様の症状が現われます。
 

自律神経が障害されると

前述のように起立性低血圧(立ちくらみ)、発汗の異常(汗をたくさんかく、逆に汗をかかなくなる)、消化器症状(胃の運動が悪くなり、食べたものがいつまでも胃に残っているような感覚がある、食べ過ぎ・飲み過ぎではないのに胃もたれする)などの不調が現われます。
また、今回のFさんのようにお腹が痛くないのに下痢になることや、下痢と便秘を繰り返すような場合もあります。
 

起立性低血圧(たちくらみ)について

起立性低血圧はもともと高齢者に多く、高齢者の20%に見られる症状のひとつです。糖尿病神経障害で自律神経が障害されると、立ち上がる動作のときに血圧上昇が遅れて立ちくらみを起こし、意識を失うような感覚になります。

ですから糖尿病の方で、「近頃立ちくらみする」「胃腸の調子が悪い」などの症状が長く続くようなことがもしあれば、ぜひ糖尿病専門医に相談して一度検査を受けてみてください。
 

著者プロフィール:小宮山 恭弘(糖尿病療養指導士)
1988年 行岡医学技術専門学校臨床検査科卒業。2001年より大阪鉄道病院にて糖尿病療養指導士として勤務。2015年3月 大阪市立大学大学院 生活科学研究科卒業。博士(生活科学)。

 

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