インスリン療法を知ろう!上手に使って血糖コントロールを改善
-第1回 インスリンとは?
インスリン療法が適応されるとき ― 絶対的適応
では、どういう人がインスリン療法の対象となるのか、お話しましょう。
インスリン療法を適応されるケースは、大きく2つに分かれます。
「絶対的適応」と「相対的適応」です。
絶対的適応は、インスリン療法なしには生きていけない、絶対に必要なケース。
相対的適応は、インスリン療法を行わなくても直ちに生命にかかわることはないけれど、血糖コントロールのために必要なケースです。
絶対的適応には次のようなケースがあります。
① インスリン依存状態(1型糖尿病)
自分でインスリンを作りだすことのできない1型糖尿病の場合は、外部から補うインスリ
ン療法が必須です。
② 糖尿病性昏睡を起こした場合
糖尿病性昏睡とは、インスリンが極端に不足することで起こる症状であり、放っておくと
生命に関わる危険な合併症のひとつで、速やかにインスリンの投与が必要です。
③ 重度の肝障害・腎障害を合併している場合
肝臓・腎臓における薬の代謝(分解)・排泄が妨げられるため、薬の効き目が強く出た
り、副作用が出たりしやすく危険なため、インスリン療法が用いられます。
④ 重度の感染症(肺炎、腹膜炎など)を併発している場合
糖尿病患者は感染症にかかりやすいものですが、感染症にかかると、インスリンを効きに
くくする物質が増えて糖尿病の状態が悪くなり、感染症もさらに進行します。そこで、感
染症が治るまでの間、インスリンで治療を行います。
⑤ 外傷、中等度以上の外科手術(全身麻酔するなど)を受ける場合
大きな手術の場合は短時間での血糖コントロールが必要になるため、インスリン製剤が使
用されます。また、手術そのものがストレスとなり、糖尿病を悪化させる場合もインスリ
ン療法を行います。
⑥ 妊娠中の血糖コントロールが悪い場合
経口糖尿病薬は、胎盤を通過して胎児に影響してしまいますので、食事療法・運動療法で
十分な血糖コントロールができない場合には、インスリン療法を行います。
⑦ 静脈栄養時の血糖コントロール
栄養製剤には高濃度のブドウ糖が含まれていますので、血糖値が上がってしまいます。そ
こで血糖コントロールのために、インスリン製剤がもちいられます。