インスリン療法を知ろう!上手に使って血糖コントロールを改善
-第1回 インスリンとは?
インスリン療法が適応されるとき ― 相対的適応
相対的適応には、次のようなケースがあります。
① 2型糖尿病でも著しい高血糖を認める場合
たとえば、空腹時血糖値250mg/dL以上、随時血糖値350mg/dL以上といった場合、イン
スリンを使用して、速やかに高血糖状態を改善します。インスリン製剤を投与することで
すい臓からのインスリン分泌が回復し、短期間でインスリン療法を中止できることがあり
ます。
② 経口薬では血糖コントロールの改善がみられない場合
経口薬が効かない(SU薬一次無効等)、または長期間使用しているうちに次第に効かな
くなった場合(SU薬二次無効等※)には、インスリン療法に切り替えます。インスリン
療法に切り替えるとβ細胞が休息でき、インスリンの分泌能力が回復することがありま
す。
※SU薬とは、スルホニル尿素薬のこと。インスリン基礎分泌を促進する働きがあるが、
長期間使用しているとβ細胞の機能が低下して、効果が減弱する。これをSU薬の二次無
効という。
③ やせ型で栄養状態が低下している場合
やせ型で栄養状態が悪い場合は、インスリンを分泌する能力が低下していると考えられま
す。そのためインスリン投与により、症状および血糖値を改善します。
④ ステロイド治療時に高血糖を認める場合
ステロイドは、肝臓で糖を合成するはたらきを促進し、また筋肉では糖の取り込みを妨げ
ますので、血糖値が上昇します。ステロイド治療時には、急激な血糖値の上昇に対応する
ために、インスリン療法が取り入れられる場合があります。
⑤ 糖毒性(高血糖によって起こる悪循環)を解消したい場合
糖毒性とは、高血糖がすい臓のβ細胞に悪影響を与えて、インスリンの分泌もインスリン
の効き目も悪くしてしまうこと。この糖毒性を早く解除するためにインスリン療法を行う
ことも多くあります
どんなときにインスリン療法が適応されるか、おわかりいただけたでしょうか。
次回は、1日何回どのタイミングでどんなインスリン製剤を注射するのかなど、病態に応じた組み合わせのパターンをご紹介します。
著者プロフィール:大武 幸子(医師)
2000年東京女子医科大学医学部卒業。
東京女子医科大学病院糖尿病センター勤務を経て、現在 東京女子医科大学病院糖尿病センター兼東京女子医科大学医学部学務課非常勤講師。2009年より、医療法人 平心会 ToCROMクリニックにて治験担当医師として勤務。
専門分野は糖尿病、日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会糖尿病専門医、日本医師会認定産業医。