Come On! 糖尿病教室
-第11回 糖尿病網膜症の悪化に注意
はじめて糖尿病を指摘されたHさん:(50歳・男性)の場合
Hさんはアパレル商社で勤務していましたが、4年前に同僚と新しい会社を立ち上げ、バリバリ仕事をこなす毎日を送っていました。体型もお腹のぼってりした周囲の中年おじさんと違い、仕事柄いつもパリッとスーツを着こなした、自称ちょい悪おやじです。
そんなHさん、会社での検診を受けていないのが気になり、人間ドックを受診した際に2型糖尿病を指摘されました。近くのクリニックを受診したところ、HbA1cは9.2%(NGSP)、空腹時血糖が169mg/dL、食後2時間の血糖が280mg/dLでした。
軽度の神経障害、単純性網膜症(軟性白斑有り)がありましたが、腎症はなく、合併症もそれほど進行していないことから、しばらくは経口血糖降下薬を服用せず、食事療法と運動療法で血糖コントロールを行うことになりました。
Hさんは先生に「がんばって自力で治します」と宣言し、医師からは「糖尿病は治る病気ではありませんが、食事と運動療法で、薬を飲まずに治療を継続することはできます。でも、あんまりがんばり過ぎずに、あせらずゆっくり治していきましょう」と説明を受けました。
Hさんは、若いころは野球の選手で甲子園にも出場した経験を持つ、元スポーツマンです。しかし最近は遅くまで仕事をし、さらに仕事の付き合いで連日飲酒して帰ることも多かったため、ほとんど運動もできず、体重もここ数年徐々に増加してきていました。家族には「お父さんは糖尿病を自力で治してみせる!」と宣言し、早速朝夕のウォーキングを始めました。
Hさんのお住まいは郊外の戸建で、自宅から職場まではバスと電車で約30分です。そこでHさんは最寄り駅までのバス通勤をやめ、およそ7.5kmを徒歩に切り替えました。スマートフォンに搭載された万歩計とカロリー消費のアプリを見ながら、片道75分、往復2時間30分のウォーキングを毎日続け、26,000~30,000歩という徹底した運動療法に励みました。アルコールの付き合いも毎日だったものをノー残業デーの水曜日と金曜日、週末土日の週4日に減らし、食事も油ものを控えて野菜を多く採るなど、外食時にもカロリーに気をつけてしっかりと自己管理ができていました。