糖尿病を指摘されて２ヵ月が過ぎ、自宅最寄りのクリニックへ３回目に受診した際、HbA1cは9.2％から6.9％まで改善しました。体重もわずか２ヵ月で５kgも減量し、体型もすっかり若いころに戻ったHさん、看護師にも「Hさん、若くなって、ますますちょい悪っぽくなりましたねー」と声をかけられ上機嫌ですが、実は心配な点もありました。

体が軽くなって調子はいいものの、近頃急に物がゆがんで見えることがあり、目の調子がどうも良くないのです。診察で先生に相談すると、先生は心配そうな表情で、「急にがんばり過ぎたので、合併症が悪化したかもしれない」と、大きな病院を紹介するのですぐに検査を受けるように言われ、慌てて紹介された病院を受診しました。

紹介された糖尿病代謝内科では、初診時の検査と眼科受診をしました。問診、診察後、尿検査と採血検査に続いて、心電図と自律神経の検査である、R-R心拍変動検査、頸動脈検査のために、検査室に来ました。

CDEJ： Hさん、おはようございます。

Hさん： おはようございます。

CDEJ： この検査が終わったころに、ちょうど眼科の診察もありますから。

Hさん： そうなんだよ。糖尿病で運動と食事をがんばれば、薬を飲まずに治療できるって聞いて、毎日30,000歩くらいウォーキングをがんばったら、HbA1cも随分良くなったのに、目が見えづらくなっちゃって。すぐに大きな病院で診てもらえって先生が慌ててこちらに紹介してくれたんですよ。なんでがんばったのに網膜症がひどくなったんだろう……。

CDEJ： そうなんですね、毎日かなりがんばって一生懸命治療しようとしたのに、網膜症が進行してしまったんですね。

Hさん： そういや先生は、あんまりがんばり過ぎずに、ゆっくり治療していこうって言ってたけど……。

CDEJ： そうなんです。Hさんのように若くて活動量が多い方は、時折がんばり過ぎて、血糖コントロールが急激に改善して、そのせいで網膜症が悪化してしまうことがあるんですよ。
はい。心電図、R-R心拍変動検査、頸動脈エコーまで終わりましたので、眼科診察に案内しますね。

こうして眼科で眼底検査を受けたHさんは、眼科医師から急激な血糖値の改善が原因で、単純性網膜症から増殖性網膜症に進行していること、そしてもしも新生血管が破れて出血したら、最悪の場合、失明の恐れがあると告げられました。その後眼科でレーザー凝固による、出血防止の処置が行われ、失明は免れました。