インスリン療法を知ろう!上手に使って血糖コントロールを改善
-第3回 インスリン療法の実例
HbA1c値により強化インスリン療法を選択
【ケース2】58歳男性/体重60kg/BMI 19
生活スタイルに関わらず、強化インスリン療法を開始した例です。
HbA1c(NGSP値)12%の2型糖尿病患者さんで、口渇、多飲、多尿の症状があり、月3kgの体重減少が見られました。
打ち方 | 1日4回(毎食前+就寝前) |
インスリン製剤 | (超)速効型と、持効型または中間型の併用 |
1日投与量 | 12単位(体重1kgあたり0.2単位) |
眼科と併診の上、眼底出血の有無をチェックします。急激な血糖コントロール改善は網膜症を悪化させるため、1ヵ月で0.5~1%のHbA1c値の改善を目指します。
治療法の選択には、HbA1c値がひとつの目安となります。
HbA1c(NGSP値)が6.5%未満なら、基本的には食事療法と運動療法で血糖コントロールを行います。6.5%~8.0%の場合は飲み薬中心で、病歴や症状に応じてインスリン療法を取り入れます。8.0%以上の場合は、インスリン療法を選択することが多くなります。
この患者さんの場合はHbA1c12%だったので、強化インスリン療法を選択し、1日投与量12単位、毎食直前に(超)速効型を3単位ずつ、就寝前に持効型または中間型インスリンを3単位打つことにしました。
このように、個々の患者さんの症状に応じて、生活スタイルにある程度合わせられる場合と、治療法の選択肢が限られてくる場合があります。
次回は、インスリン療法についてのよくあるご質問をとりあげ、お答えします。
著者プロフィール:大武 幸子(医師)
2000年東京女子医科大学医学部卒業。
東京女子医科大学病院糖尿病センター勤務を経て、現在 東京女子医科大学病院糖尿病センター兼東京女子医科大学医学部学務課非常勤講師。2009年より、医療法人 平心会 ToCROMクリニックにて治験担当医師として勤務。
専門分野は糖尿病、日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会糖尿病専門医、日本医師会認定産業医。