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糖尿病の治療薬

-第4回 チアゾリジン薬(TZD薬)

チアゾリジン薬(TZD薬)と善玉・悪玉アディポサイトカイン

糖尿病の治療薬 第4回は、チアゾリジン薬(TZD薬)について、詳しく説明していきます。

TZD薬は、主に脂肪細胞に存在するPPARγ(ガンマ)という受容体に結合して、インスリンに対するからだの反応が鈍くなる「インスリン抵抗性」を改善することにより、血糖値を下げるはたらきがあります。インスリン抵抗性を改善するはたらきがありますので、「インスリン抵抗性改善薬」とも言われています。

PPARγは、脂肪細胞の分化に重要な役割を担っていて、これを活性化することにより脂肪細胞の分化が促進されます。ではなぜ脂肪細胞の分化促進により、インスリン抵抗性が改善するのでしょうか。それを理解するには、まず脂肪細胞の機能をよく理解する必要があります。

脂肪細胞は、脂肪としてエネルギーを蓄える細胞ですが、近年、単なるエネルギーを貯蓄するためだけの細胞ではなく、さまざまな生理活性物質(ホルモン)を分泌していること、そしてこれらの分泌異常が生体内の代謝に大きく影響していることが注目されています。

脂肪細胞には、中性脂肪を多く貯めこんで肥大した細胞と中性脂肪の少ない小型の細胞があります。脂肪細胞から分泌されるホルモンを総称して「アディポサイトカイン」といい、コレステロールと同じように「善玉」と「悪玉」が存在していて、肥大した脂肪細胞からは「悪玉アディポサイトカイン」が、小型の脂肪細胞からは「善玉アディポサイトカイン」が多く分泌されます。

善玉アディポサイトカイン(アディポネクチン)は、インスリンのはたらきを活性化させて、筋肉や肝臓での糖代謝を促進します。逆に悪玉アディポサイトカイン(レジスチン、TNF-αなど)は、インスリンの感受性を弱めて、糖代謝を阻害します。

正常な状態では、善玉と悪玉のアディポサイトカインの分泌はバランスがとれていますが、肥満により内臓の脂肪細胞が肥大した状態になると、善玉アディポサイトカインの分泌量が減り、悪玉アディポサイトカインが過剰に分泌されます。

この分泌のバランスが悪玉アディポサイトカイン優位に傾くことにより、インスリン抵抗性を引き起こし、糖尿病を発症させる原因になっているのです。

また、善玉アディポサイトカインは、血管を拡張して血圧の上昇を抑える作用や、さらに傷ついた血管を修復する作用も持っているため、悪玉アディポサイトカインの過剰分泌は、糖尿病だけでなく、高血圧や脂質異常症、動脈硬化などを進行させると考えられています。

TZD薬は、脂肪細胞に存在するPPARγに作用して肥大した脂肪細胞を小型の脂肪細胞に分化させて、インスリンの感受性を増強させる善玉アディポサイトカインを増加させ、悪玉アディポサイトカインの過剰分泌を抑制し、インスリン抵抗性を改善します。その結果、肝臓からのブドウ糖の放出は抑制されて、筋肉へのブドウ糖の取り込みを促進させ、血糖値を下げるというわけです。

このようなことから、TZD薬は、インスリン抵抗性により、高血糖になっている肥満気味の糖尿病の方に多く処方されます。この作用は、前回説明しましたBG薬と同じような作用ですが、BG薬が主に肝臓ではたらくのに対して、TZD薬は主に筋肉や脂肪細胞にはたらきます。つまりTZD薬は、BG薬とは異なる作用部位およびメカニズムを持った比較的新しいお薬といえます。

 

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