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糖尿病の治療薬

-第4回 チアゾリジン薬(TZD薬)

チアゾリジン薬(TZD薬)を服用するときの注意点

TZD薬の服用の際に、いくつかの副作用に注意する必要があります。副作用は、肝機能障害、浮腫、急激な体重増加などが挙げられます。少し詳しくみていきましょう。

まず肝機能障害についてですが、TZD薬は主に肝臓で代謝されるため、肝臓のはたらきが低下している方が服用した場合、AST(GOT)、ALT(GPT)、AL-P、γ-GTPといった肝機能検査値が上昇する可能性があります。ですから定期的に肝機能検査をして、異常が認められた場合は服用を中止するなど適切な処置が必要です。

余談ですが、最初に発売されたTZD薬のトログリタゾン(ノスカール®)は、重篤な肝障害により発売中止となったという経緯があります。現在、日本で承認され販売されているTZD薬は、武田薬品工業株式会社のピオグリタゾン(アクトス®)のみです。
アクトス®もノスカール®も同じTZD薬であるため、アクトス®にも同様の肝障害が懸念されましたが、大規模な市販後調査を実施し、肝機能障害の発症率は低いことが確認されています。しかしながら、服用された場合には定期的な肝機能検査が必要です。

つぎに浮腫についてですが、浮腫とは顔や手足などが体内の水分によりむくんでいる状態です。浮腫が高度になると、指で押した跡が残るようになります。

浮腫は、腎臓でのインスリン感受性の増強により、水分を尿として体外に出にくくするようにはたらき、その結果体内を回っている血液量(循環血しょう量)が増加するために発現すると考えられています。
この循環血しょう量の増加は心臓に負担をかけてしまうため、心臓に疾患のある方には特に注意が必要で、心不全の方は服用してはいけないことになっています。また浮腫は、男性よりも女性に多く、男性の約3倍の発現率と言われています。

最後に急激な体重増加についてですが、TZD薬のはたらきによって脂肪細胞の分化が促進されて小型の脂肪細胞の数が増えますので、過食や運動不足で、増えた小型脂肪細胞に脂肪分が蓄えられて肥大した大型脂肪細胞になり、体重が増加することがあります。
また、浮腫によって体内の水分が増えることにより、その分体重も増えることも考えられます。

このように、TZD薬の服用によって肥満になりやすい状態になるため、お薬を飲む前よりも肥満が進行してしまう恐れがありますので、定期的な体重測定と糖尿病治療の基本である食事・運動療法の徹底が必要ということになります。

ですからTZD薬の服用中は、顔や手足がむくむ、急激に体重が増える、心臓がドキドキする、息切れがするなどの症状に注意し、定期的な診察・検査が必要です。特に心臓に疾患のある方、高齢者、女性の方は、経過を十分に観察しながら慎重に服用する必要があり、医師はそういった点を注意して処方しています。

以上、脂肪細胞の機能を理解し、TZD薬のメカニズムを知ることにより、一見別々のものであると思われがちな肥満と糖尿病が、密接に関わっていることが垣間見えたのではないかと思います。

次回は、α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI薬)について詳しく説明していきます。

著者プロフィール:木元 隆之(薬剤師)
1998年インクロムの提携医療機関に入職。約7年の治験コーディネーター(CRC)の経験を経て、現在、治験事務局長を務める。

 

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