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糖尿病の治療薬

-第11回 インスリン療法-その6

低血糖症がでたら、その対策は?

それでは、低血糖症状が現れたら、どうすればよいのでしょうか。
低血糖症状には、意識消失が起きる場合がありますので、意識があるかないかで、自分で対処する場合と家族や身近な人などの他人に対処してもらう場合が考えられます。

自分で対処する場合は、まずは、直ちに糖分が多く含んだものを摂取することです。糖分は、ブドウ糖(単糖)が最も効果的で、なければ砂糖(ショ糖)またはブドウ糖を含む市販のジュースでも構いません。

実は、あめ玉やチョコレートなどはすぐに効果が出ませんので、緊急時にはあまり役に立ちません。ブドウ糖であれば10g、砂糖であれば20g、ブドウ糖を含むジュースであれば約200mLを飲んで、しばらく安静にします。通常、15分程度で症状は回復しますが、症状が続くようであれば、再度同じ量を追加して摂取してください。

低血糖症状がいつどこで現れるか分かりませんので、いざというときにすぐに取り出せるように、常にブドウ糖を携帯しておく必要があります。ちなみに、経口剤の糖尿病治療薬であるα-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI薬)は、二糖類(砂糖)を単糖類(ブドウ糖)に分解するα-グルコシダーゼの活性を阻害し、小腸からのブドウ糖の吸収を遅らせて食後の急激な血糖上昇を抑えるという薬です。ですから、α-GI薬を服用しているときの低血糖症状には、砂糖ではなく必ずブドウ糖を摂取することが必要です(第5回コラム参照)のでご注意を。

自分の意識がなく、家族や身近な人などに対処してもらう場合は、まずは低血糖になった場合に意識がなくなる可能性があることを説明し、その場合の対応について頼んでおくことが大切です。

●話しかけても返事をしないなど普段と様子が違う場合は、低血糖を疑ってもらう

●携帯しているブドウ糖を飲ませてもらう
少量の水にブドウ糖を溶かしたものを飲ませてもらうか、飲み込まない場合は、唇と歯肉の間にブドウ糖をそのまま擦り込ませるようにしてもらう。

●血糖上昇ホルモンであるグルカゴンを持っている場合は、1バイアル(1mg)を筋肉内または静脈内に注射してもらう
ただし、注射法については事前に十分指導を受けてその人が対処できるようにしておく必要があります。グルカゴン投与後には、二次的な低血糖が起こることがあるので、その予防のために、症状回復後に糖分を経口摂取することが望ましいとされています。また、アルコールの飲みすぎによる低血糖症状には効果がありません。

●対処ができない場合や対処しても回復しない場合は、主治医と連絡をとり、すぐに医療機関へ搬送してもらう


低血糖症状は、インスリンを含め糖尿病治療薬の副作用のひとつといいましたが、むしろ、治療薬の作用が効き過ぎたときの症状であり、本来あるべき作用の一つといえます。厳格な血糖コントロールをめざせばめざすほど、低血糖は起きやすくなるのです。

糖尿病の治療の基本は、いかに血糖値を下げてコントロールしていくかがポイントですので、低血糖症状が現れそうな場合には、どういった予防をしておけばよいか、また、低血糖時には、どのような対処をすればよいかといった知識を十分に身につけておけば、やみくもに低血糖を怖がる必要はありません。

自分なりの低血糖対策を考え、いつでも、どこでも速やかに対処できるように知識を十分に身につけていきましょう。また、規則正しい生活を心掛けて、よりよい血糖コントロールをめざしていきましょう。

以上、5回にわたり、インスリン療法について説明してきましたが、お役に立てましたでしょうか。糖尿病は、一度なってしまうと完治することは難しい病気ですが、正しい治療により、正常に近い血糖コントロールに保っていくことは可能です。上手に糖尿病と付き合っていくための正しい知識を身に付け、患者さん自身の努力次第で、自分で治療していける病気であることをご理解いただけますと幸いです。

 

著者プロフィール:木元 隆之(薬剤師)
1998年インクロムの提携医療機関に入職。約7年の治験コーディネーター(CRC)の経験を経て、現在、治験事務局長を務める。

 

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