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糖尿病の治療薬

-第3回 ビグアナイド薬(BG薬)

ビグアナイド薬(BG薬)の作用

BG薬の作用は、主に3つの作用で糖尿病に対して効果を発揮すると考えられています。

  1. 肝臓でブドウ糖が新しく生成(糖新生)されるのを抑制する(肝臓からの糖の放出を抑制する)
  2. 筋肉、脂肪組織でのブドウ糖の取り込みを促進し、インスリン抵抗性(インスリンに対するからだの感受性の低下)を改善する
  3. 腸でのブドウ糖の吸収を抑制する

これらのメカニズムについては、まだ完全に解明されているわけではありませんが、肝臓や筋肉・脂肪組織で生体内に存在するAMPキナーゼという酵素が深くかかわっていて、その酵素を活性化させることによって、糖新生や脂質代謝を調節していると考えられています。

これらの作用メカニズムから、BG薬はインスリンの分泌促進作用は持たないため、低血糖の危険が少なく、また体重を増加させることなく血糖値を低下させ、さらに血液中の脂質の改善や脂肪肝の改善などももたらすと考えられていて、多彩な作用を持つお薬といえます。


気になるBG薬の副作用「乳酸アシドーシス」ですが、BG薬の服用により主に肝臓での乳酸からの糖新生が抑制され、その結果、乳酸が増加します。通常であれば、乳酸値のバランスを保つように生体内は働くものなのですが、肝臓での代謝の能力以上に乳酸が増加した場合や、肝臓での乳酸の代謝能力が低下している場合は乳酸が体内に蓄積していきます。その結果、血液が酸性に傾く乳酸アシドーシスを発現させるおそれがあるのです。

乳酸アシドーシスの症状としては、食欲不振、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、倦怠感、けいれんなどがあり、進行すると過呼吸、脱水、低血圧、昏睡状態などの重篤な症状を引き起こすこともあります。

しかし、現在、日本で発売されているメトホルミン(メルビン®)の乳酸アシドーシスの発現は極めてまれですので、それほど心配する必要はないでしょう。ただし、メトホルミンは腎臓から排泄されるお薬ですので、特に腎機能障害の方や腎機能が低下している高齢者の方などには、投与できないことになっています。

BG薬の歴史から始まり、作用メカニズムについてご紹介いたしましたが、ご理解いただけましたでしょうか。BG薬は、現在その効果が見直されているお薬ですので、今後ますます期待されるお薬になると思います。

次回は、チアゾリジン薬(TZD薬)について詳しく説明していきます。

著者プロフィール:木元 隆之(薬剤師)
1998年インクロムの提携医療機関に入職。約7年の治験コーディネーター(CRC)の経験を経て、現在、治験事務局長を務める。

 

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