[糖尿病 運動] セーフティウォーキングのススメ
-第29回 キャッチ歩行で着地衝撃を和らげる
ラソンの世界記録保持者は、キャッチ走法だった
ロンドンオリンピック(2012年)の前に、当時、マラソンの世界記録保持者だったケニアのパトリック・マカウ選手を招いて、国立スポーツ科学センターでさまざまな測定が行われました。その結果を日本のマラソンの一流選手と比較したところ、強さの理由ともいえる明らかな違いが認められました。
表1は、マカウ選手と日本の一流選手が、世界記録と同じ速度で走ったときの床反力値と血中乳酸値を示したものです。
床反力は、ランニングで一歩一歩着地する時の地面から受ける反発力です。なんとマカウ選手は、日本の選手より体重の60%(体重×0.6)も少なかったのです。
血中乳酸値は、有酸素運動としてエネルギーを賄えなくなったときに増加してきます。通常、4ミリモルが有酸素運動から無酸素運動に切り替わる臨界値とされています。
ところがマカウ選手の場合は、20km/h以上の高速で走っているのに3.2ミリモルと驚くほど低い乳酸値でした。これは、非常に高い有酸素運動能を持っていることを表しています。その要因としては、床反力を小さくすることによってエネルギー消費を節減していたと考えられます。
また、マカウ選手の走り方を高速度カメラで撮影して観察したところ、前方に振り出した足が地面をキャッチすることによって、極めて着地衝撃の小さい走り方をしていることがわかりました。
そこで今回は、このキャッチ走法をウォーキングに応用した、キャッチ歩行をご紹介したいと思います。