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糖尿病の治療薬

-第9回 インスリン療法-その4

強化インスリン療法

次に、インスリン治療として一般的に行われるようになってきた「強化インスリン療法」について見ていきましょう。

第7回のコラムで記載しましたとおり、「基礎分泌」と「追加分泌」のどちらも分泌されない1型糖尿病の人や、「追加分泌」が不足し、分泌のタイミングも遅い2型糖尿病の人は、インスリン製剤で補充しながら血糖値の変動パターンを正常化する必要があります。

強化インスリン療法とは、インスリンの頻回注射または持続皮下インスリン注入療法(CSⅡ)でインスリンの補充をしながら、注射のタイミングに合わせて血糖自己測定(SMBG:Self-Monitoring of Blood Glucose)を行い、そのときの血糖値に応じてインスリンの量を調節し、より厳格な血糖コントロールを目指す治療法です。インスリンの量の調節は、医師の指導のもと患者自身が決められた範囲内で行います。

しかし、厳格な血糖コントロールを行うことにより、低血糖の可能性や頻度も高くなりますので、強化インスリン療法を行う際には、事前に低血糖の原因や症状をよく理解し、適切な対応が正確にできるように一定のトレーニングを行うことが非常に重要になります。

前回少し出てきました強化インスリン療法の投与方法の「持続皮下インスリン注入療法(CSⅡ)」は、電動式の専用のインスリン注入ポンプを用いて、皮下に挿入した細いチューブから持続的にインスリン製剤を皮下に注入する方法で、インスリンポンプ療法とも呼ばれています。

使用する製剤は超速効型インスリン製剤で、24時間自動的に、基礎分泌を代替するようにインスリンを持続的に注入します。インスリンを頻回に注射するよりも、さらに安定して血糖コントロールが改善します。インスリン製剤の注入速度を時間毎に変えたり、適切なパターンで注入したりすることで、低血糖のリスクが軽減することも大きなメリットです。

持続皮下インスリン注入療法(CSⅡ)が必要になるのは、従来の頻回注射法で血糖のコントロールが難しい1型糖尿病の方や、低血糖が頻繁に起こる不安定型の糖尿病の方、特に夜間に低血糖を伴う方、勤務時間や食事時間が不規則な方、血糖コントロール困難な糖尿病の妊婦さんなどです。

ただし、適切に使用しないと、血糖が短時間で上昇し、数時間でケトアシドーシス(第6回参照)をきたす可能性がありますので、ポンプの操作法やトラブル時の対応などについて、主治医の説明をよく聞いて理解する必要があります。

以上、今回は、インスリン製剤の保存方法・注意点と強化インスリン療法について説明いたしましたが、お役に立てましたでしょうか。次回は、血糖自己測定(SMBG)について、そしてインスリン製剤の注射回数と組み合わせについて具体的な例を見ながら、実際のインスリン治療について触れていきたいと思います。

 

著者プロフィール:木元 隆之(薬剤師)
1998年インクロムの提携医療機関に入職。約7年の治験コーディネーター(CRC)の経験を経て、現在、治験事務局長を務める。

 

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